経営の名語録(7)

人間はほんとうは偉大なものである。真実に直面すれば、かえって大悟徹底し、落ち着いた心境になるものである。だからおたがいに、正しいものの見方を持つために、素直な心で、いつも真実を語り、真実を教え合いたいものである” 松下幸之助著 『道をひらく』より

危機発生時の情報発信の鉄則は、正しい情報(真実)を分かりやすく迅速に伝えることですが、すべてのリーダーがこの鉄則に従って行動しているとは到底言い難いのが実情です。

ではなぜ、リーダーはこの鉄則を守らず情報を歪めて伝えてしまうのでしょうか?

それは、情報の受け手に対する優しさや思いやりといったポジティブな理由もありますが、リーダーが受け手の理解力の軽視することや(どうせ分からないんだから‥)、リーダー自身の保身や優柔不断といったネガティブな理由もあります。

危機を乗り越えるためには、人々が一致団結して事に当たらなくてはなりません。団結の要は相互信頼です。信頼は正しい情報の共有なくしては成り立ちません。情報を歪めて伝えれば、衆知は必ずそれを見破り、そこから不信の連鎖が広がります。団結なき集団にもはや危機を克服する力はありません。

松下幸之助はこうも言っていいます。“かわいそうとか、つらかろうとか考えて、真実をいわないのは本当の情愛ではあるまい。不幸とは、実相を知らないことである。真実を知らないことである

相手のことを本当に大切に思うのであれば、リーダーは、正しい情報を分かりやすく迅速に、包み隠さず伝えるべきです。勇気をもって真実を伝え、受け手の叡智を信頼するべきです。コロナ危機が拡大している今だからこそ、リーダーには冒頭の言葉を実践する胆力が試されています。