経営の名語録(14)

危険な状況で不確実性がきわめて高いとき、人はどうしてよいかわからなくなる。そんなときに、当てずっぽうしか言えないなどと認めるのは、懸かっているものが大きいほど許されない。何もかも知っているふりをして行動することが、往々にして好まれる” D・カーネマン著 『Fast&Slow』より

有事におけるリーダーの心構えで最も重要なことは何でしょうか?ノーベル経済学賞受賞者のカーネマン先生はその答えを「自信に満ちあふれた態度」と述べています。

有事の際、人の思考は本能・直感・衝動に支配され、論理や冷静さは隅に追いやられがちになります。その結果、思考は極端な方向に偏り、態度を曖昧にする人物よりも、白黒をはっきりと一刀両断してくれる人物に信頼を寄せることになります。

平時であれば、事実を丹念に積み上げ、様々な可能性を示しながら慎重に物事を前に進めるリーダーが好ましいのかもしれませんが、今のような有事においてはそのようなリーダーは優柔不断と思われ、求心力を失う恐れがあります。求心力が失われれば、人々は団結できなくなり、危機の克服が遠ざかってしまいます。

今人々が本能的に求めているのは、毅然とした態度を崩さず、単純明快なメッセージを自信たっぷりに言い切ってくれるリーダーです。実際には不安や焦りでいっぱいでも、そういった感情を棚上げして、果たすべき役割を演じ切る。偉大なリーダーとはストイックな名優のような一面を持っているのかもしれません。